人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ちきんこんそめ

ミュージカル『DNA-SHARAKU』福岡公演 感想

■ミュージカル『DNA-SHARAKU』
■日時 2016年2月6日(土)17:30開演
■会場 キャナルシティ劇場 2階I席26番
■原案 冲方 丁
■演出・脚本・作詞 小林 香
■音楽 井上ヨシマサ
■映像 齋藤精一(ライゾマティックス)
■出演 ナオト・インティライミ/小関裕太(W主演)
    新妻聖子/坂元健児/田野優花(AKB48)
    ミッツ・マングローブ/藤岡正明/Spi/大野幸人/Miz
    朝海ひかる/中川晃教/イッセー尾形/三井 聡/安倍康律
    仙名立宗/高橋卓士/北村 毅/穴沢裕介/舞城のどか  
    大月さゆ/徳垣友子/今枝珠美/赤澤かおり/小山侑紀


4つの時代を舞台にした
前代未聞の“SF 歴史スペクタクルミュージカル”


というのが煽り文句のお芝居。
ぶっちゃけどんな内容なのかまったく予想不可能で、
中川晃教さんと坂元健児さんと新妻聖子さん目当てで
チケットを取った次第。

で、

開幕してものの数秒で思ったんですが

お芝居においてオープニングって大事だね☆

「お前なに言ってんの?」
って思われる方のために説明しますと
大体、こう演劇にしろミュージカルにしろ
客席が暗くなってからお芝居が始まるまで
オーヴァチュアがあったり語り部がいたり、
そういうお客さんが現実世界から物語の世界へと
感情を移行させる時間を要することが多いのですが
いや、『DNA-SHARAKU』はそのへん凄いよ。

客席が暗くなってから
舞台に照明が瞬間、途端怒涛の説明台詞!(笑)

おお!?
ちょ、ま、待って待って、
まだ心が付いていけてない!
なに?なにが起きてんの!?(笑)

感情移入がまったく出来ていない状態だったけど
耳と脳みそをフル活動させて
情報だけは必死こいて収集するもずく。
開幕してものの数秒で置いていかれてたまるかい!(笑)

時は2116年、日本は人工知能「サイ」が支配していた。
人間の「創造する心」が争いを生み出す元凶だとして
「サイ」は日本人の持つ豊かな「創造する心」を
根絶やしにしようとしていた。

タイムトラベルで過去に遡り、
歴史上の優れた芸術家や文化人など、
「創造する心」を強く持つ人物を2116年に連行し、
彼らの「創造する心」を消去する行為を繰り返す日本政府。

そんな中、
人工知能「サイ」は一人のアーティストを探していた。

その名は『東州斎写楽』

江戸時代に活動していた、謎の天才浮世絵師である。
日本を戦争から救うため、「東州斎写楽を抹殺せよ」。


というのが物語の大筋です。
この設定を開幕してから全部早口の台詞で説明されて
もずくの脳みそはアップアップです(笑)

煽り文句のとおり
4つの時代を行き来する物語で
登場人物も時代ごとに登場しますので
分かりやすくまとめておきます。


【2016年】
柊健二/ナオト・インティライミ

【2045年】
結城連/小関裕太
白崎れもん/田野優花

【2116年】
佐山ハル/新妻聖子
水枝リドル/坂元健児
佐山小鳥/ミッツ・マングローブ
在人/中川晃教

【1793年】
小紫/朝海ひかる
蔦屋重三郎/イッセー尾形
斎藤十郎兵衛/藤岡正明
伊兵衛/Spi
ひょっとこ/大野幸人
おかめ/Miz


4つの時代とは言いますが
物語の中で重要視されるのは
2116年と1793年です。
ほぼこの両方を行き来することになります。

人工知能「サイ」は写楽を探し出すため
2016年から柊健二(ナオト・インティライミ)と
2045年から結城連(小関裕太)を江戸時代に送り込みます。

絵を描くことが禁じられている2045年において
自分の絵を残すことだけを考えて写楽を探す連と
創造する心を失くすまいと写楽を守ろうとする健二の
両極端な対比が良かったですねー。

んー、でもさでもさ。
ちょっとここで疑問だったんですが
「人間の創造する心」を根絶やしにするためには
写楽を殺さなければならない、というのはどうなんや。
だってはるか昔、人類が火を使い出したときから
すでに壁画やら土器やら作りまくってたじゃないですか。
日本人が遺伝子レベルで持っていたその創造力が
江戸時代の写楽を殺せば消えるってのがよく分からん。
この舞台特有の理由付けがあるのかもしれないので
もずくの理解力が甘いせいだとも思うのですが。

まあ、とにかく
写楽を殺せば日本人から
「創造する心」がなくなるってことで。

しかし、何をどうしても写楽は見つからない。

それもそのはず。
「写楽」は一人ではなかった。

健二と連、そして未来と江戸で出会った仲間たちが
力を合わせて描いた一枚の絵、
それこそが「写楽」最初の一枚。

この展開は実に面白い!
こういうそもそもの歴史を根底から
覆す設定って面白いよね。
映像を駆使して舞台いっぱいに
色が飛び交う演出、美しかったです。
ここから「写楽」の名は
斎藤十郎兵衛に引き継がれていくんだねぇ。

で、「写楽」を守ったはいいものの
「創造する心」を保ったままでは
未来の日本は戦争に突入してしまう。

どうしようどうしよう。

そうだ、「サイ」の考えを変えるんだ!

「創造する心」の素晴らしさを
「サイ」に伝えるため、
仲間たちと共に2116年に飛ぶ健二たち。

もうね、

ここからがこの舞台のすごいところでした。

いや、
もうなんつーのか・・・

花魁の小紫役の朝海ひかるさんが
するりと着物を脱ぎ捨てて白いパンツスーツ姿に。

そのバックには朝日が昇る地球の映像。

テクノポップの音楽に乗せて
踊りだす登場人物たち。

雲の上にそびえるいくつもの鳥居の映像。

アイドル姿で踊るれもん役の田野優花さんと
小鳥役のミッツ・マングローブさん。

巨大な魚が炎に焼かれて骨になる。

踊る登場人物たち。


もずくは・・・、

もずくは一体、なにを見せられているんや・・・(動揺)

これはアレなんですね。
キャラクターとしての人格ではなく、
音楽の素晴らしさを体現するための
メタファーな存在としての演出なんですよね。
なんか、これを言うと怒られるかもですが
見ててちょっと恥ずかしかったのはもずくだけか。
いやいや、違うんですよ。
なんだろうな、えーと、
これってミュージカルの表現というよりは
ショーとかコンサートのノリに近いというか。
もずくはコンサートやライブで手を振ったり
声を上げたりっていうのがどうにも
恥ずかしくて出来ない人間なもので
この演出を見た瞬間に抵抗感が芽生えてしまって。

逆に純粋に「音楽」を愛する人には
すっごく楽しい演出だったと思います。
現に最前席のお客さんは手を挙げて手拍子してたしね。
もずくってば許容範囲が狭いのです。
申し訳なし。

そして「音楽」の力を感じた「サイ」は
人間から創造する心を取り除くことは不可能、と判断。
国の政策を変更します。
これにより戦争は回避されたのです。

登場人物たちもそれぞれの時代に帰っていきます。
この「もう二度と会えない」っていうスタンス好きです。
いいよね、こういう刹那の出会いと別れ。
切なくていとしくて好きです。

千秋楽前日ってことで
キャストさんたちがテンション高くて
カーテンコールめっちゃキャッキャしてて面白かった(笑)

個人的な意見として
脚本と演出に少し「?」が残るお芝居でしたが
作品としてやりたいことはよく分かる。
「音楽の素晴らしさ」をこちらが恥ずかしくなるくらい
超ど真面目に、直球に、まっすぐに演じられていました。
そんな役者さんたちはみなさん超絶に素晴らしく。

ここからはそんな役者さんたちについて。
なにぶん、大人数なものですべては書ききれませんので
心に残った方たちをメインに個別感想をば。

・ナオト・インティライミさん
お恥ずかしながらお名前は存じていましたが
この方の歌をまったく知りません。
聞けば分かるかもしれませんが
意識して覚えているものはありません。
それを差し引いてもとにかく歌が素晴らしかった!!
物語において重要な役割をする「春の歌」大好き!
これは終演後に男性のお客さんが
ロビーで口ずさむほどの中毒性があります!(笑)
これが初舞台とは思えないほど安定した演技でしたね。
ていうか、健二がもうナオトさんの「素」のような感じ。
フランクで温かみのあるお人柄がよく伝わりました。
客席にもファンが多くいらっしゃったようで
カーテンコールでは「ナオトー!」という声が
あちこちから上がっていました。
ほかのキャストさんからいじられまくっていた
ナオトさん可愛かったー(笑)

・新妻聖子さん
さすがの歌唱力。
愛らしい風貌。
完っ壁です!結婚してください!(ガバッ)
まさか新妻さんが歌う
「どんぐりころころ」が聞けるとは思わんかった(笑)
死ぬほど可愛い。
もう一度言う。死ぬほど可愛い。
個人的な意見、言うならばただの好みの話ですが
物語の最後は「写楽ショー」ではなく、
2116年の世界で歌うことをずっと禁じられていた
彼女の心からの歌声が「サイ」に伝わる演出だったらよかった。
たった一人の少女の歌声、という
なんかそういうささやかな力でこそ世界が変わって欲しかった。
うん、もずくの頭の中も充分恥ずかしいね。知ってます(笑)

・朝海ひかるさん
めっちゃ綺麗じゃね!?
もう言うことはそこに尽きるんですけど!
花魁姿が美しくて好きすぎます!
この方は宝塚時代からよく存じていますが
ぶっちゃけ女性として女性を演じているときの方が綺麗!
いやまあ男役を経てこそのこの美しさなのでしょうが。
花魁道中のシーンでは
双眼鏡で舐めるように見ていました(やめなさい)
あの足使いはすごい。

・坂元建児さん
ライオンキングのシンバが大好きでした。
この方の歌声が聴けるってんで
チケット取ったところも大きいもんよ。
2116年の日本政府唯一の幹部。
悪役サイドかと思いきや根はいい人。
一幕では出番が多いけど二幕ではあまり
出てこられなくて残念でした。
歌はもうさすがにお上手で惚れ惚れ。
キャラ的に感情を押し殺した歌い方が多かったですね。
もっとぐぁ~っと感情を表現する曲があったらよかったなぁ。
その点、見せ場は少なくとも
藤岡正明さんの登場時のシャウトは凄かった。
あれだけでもうお客さんの心持っていったもんなぁ。
あと、坂元さん、メイクめっちゃ濃かった(笑)

・イッセー尾形さん
演劇界の著名人!!
生で拝見するのは初めてでした。
もう、この方始終遊んでましたよね(笑)
ちょこちょこ芝居に関係ないところで
アドリブばんばん入れ込んでたのが面白かった!
こういう遊び心全開フルスロットルのおじさん大好き(笑)

・中川晃教さん
本命登場(笑)
いや、中川さんめっちゃ美味しい役でしたね。
ていうか、在人はこの作品でもずくが唯一共感出来た人物。
在人は人工知能「サイ」に心酔していて人間を軽視しています。
とにかく始終気持ち悪い言動が多く、
「サイ」のためなら平気で人を殺せる危険人物。
いい人がほとんどのこの作品で唯一の「悪役」でした。
目に白いコンタクトレンズを入れているようで
外見からもその異様さがよく分かります。
物語の最後、その在人が心から信頼していた「サイ」が
人々の歌声を聞いて政策を変更したことに戸惑い、
自分で自分の頭を撃ち抜くシーンがこの芝居で一番好き。
「間違いを正す」人工知能の「サイ」。
自分のしてきたことが「間違い」だったと言われたも同然の
在人の絶望と狂気を中川くんが全身で表現してるのがもう・・・っ!

「僕は僕を否定する。もはや人にあらず」

この歌詞、すごい印象深かった。
「在人」の名前の字面を理解していると
ここでよりいっそう胸にくる。
ここで泣き叫んでいるのが笑いに変わって、
最後に真顔になっていく演技が凄すぎる。
中川くん、凄すぎる。
ここで歌の力で改心するとかいう
オチにならなくてよかった。
可哀想だけど、うん、この演出は本当によかった。

しかし、一つ在人の行動に疑問が。
在人が物語の途中で江戸時代にやってきて
刀で人々を斬り殺したのはなんだったんだろうか。
健二たちを探していたようだったけど
「サイ」が健二たちを送り込んだのに
その健二たちを殺そうというのは
命令違反になるのではないのか?
そこまでやって町人を3人斬り殺しただけで
気が付いたら2116年に戻っていたし、
在人のタイムトラベルってなんか意味あったんだろうか。

という、最後の最後に脚本面に苦言(笑)

あ、ちなみに
カーテンコールでの中川くん可愛すぎ警報です。
ぴょんぴょん跳ねたり両手を広げて
アラレちゃんみたいに袖に走りこんでいきます。
可愛すぎかっ!(笑)


もずくの音楽への興味が希薄なせいで
なんとなく辛口な感想になってしまいましたが
音楽が大好きな人にはとっても楽しい舞台だと思う。
もずくにはちょっと素直すぎて眩しい作品でしたが
2月21日にBSでの放送が決まったようですので
興味があるという方は気軽に見てみるチャンスでござる。
by hiziki921 | 2016-02-11 04:11 | 芝居の感想文
<< 「ゲキ×シネタイム」 2016年『小林賢太郎がコント... >>



福岡在住管理人もずくの芝居に関する一人言(ネタバレ)と日々の呟きです。

by hiziki921
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
2019年 02月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2009年 11月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 04月
2009年 02月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 04月
2007年 12月
2007年 10月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
お気に入りブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧